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読書日記や著作権考などの雑記を書いてます。
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ここ最近、著作権に関する議論が盛んに行われています。
先日、JASRAC常任理事である原瑞夫氏へのインタビュー記事がCNET JAPANに掲載されていました。

JASRACは「放送通信融合」の敵か味方か--菅原常任理事に聞く
http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000055954,20364047,00.htm

ネット上では多数の意見・反応がありました。

ダウンロード違法化の動き 2007年12月24日 - 2008年1月8日 (2)
http://d.hatena.ne.jp/illegal-site/20080115/p1
初音ミクとJASRAC
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2007/12/jasrac_bba1.html

これについて僕も思うところを書いてみようかと思います。著作権に関しては、この記事に限定せず、何回かに別けて書くつもりですが、今回は主に「JASRACの主張をそのまま受け入れた場合にYouTube等の動画配信サイトがどうなるのか」と言う視点で考察してみたいと思います。
なお、僕は音楽業界関係者ではありませんし、著作権を専門で勉強した事もない単なる一利用者ですので、考察が間違ってる可能性が多々有ります。それは違うんじゃない? と言う様な点があれば、是非コメントやトラックバックを送って下さい。


さて、まず「JASRACの本質とは何か」と言う質問に対して、菅原氏は以下の様に回答しています。

 


 ご質問の主旨に沿った形で回答するならば、協会の規定に則って著作物使用の申込みがあった場合、応諾義務が定められた団体、というべきでしょうか。規定に沿ってライセンスを求められれば、否応もなく応諾します。
 JASRACはコンテンツホルダーではありません。つまり、ある特定の著作物について最大効用を考えたマーケティング戦略を組むことはなく、相手が誰であろうと、つまりは1次利用であろうが2次利用であろうが区別することなく利用を許可する。ビジネスの成否などは判断材料にありません。

 

これは極めて妥当なところでしょう。「みっくみくにしてあげる」がJASRAC登録された際にもJASRACバッシングが行われていましたが、JASRACが著作権者から著作権の管理委託を受けてその代行を行う組織である以上、規定通りに委託されたものを管理するのは当然です。また、管理委託された楽曲の使用に際しても、適正使用の範疇であれば、利用者のビジネスの成否など関係ないと言うのも極めて妥当です。むしろ、ビジネスとして成功しそうだから許諾するとか、失敗しそうだから許諾しないなどと言う事をされては困る訳で、この点に関しては何の問題もない様に思います。

次に「楽曲の作詞を手がけたあるミュージシャンが、自著において自らの詞を引用した際にも使用料を求められるなど、行き過ぎた事務対応ぶりがあるのでは?」と言う質問に対して以下の様に回答しています。

 


 個別の例として把握しているわけではありませんが、「作詞を手がけたミュージシャンに使用料を求めた」という事実は十分に考えられます。ケースによって内容は異なりますが、例えば詞を引用した出版物が出版社から発行されたものであれば、少なくとも出版社には使用料を支払う義務がある。
 また、その引用楽曲に関する著作権が作家本人のみの権利ではなく、所属事務所などと分割所有している場合もあるでしょう。一端、所属事務所に分配金を収めて、その後、所属事務所から作家の手に渡るよう契約していることもあるわけです。
 お話のケースにおいて、その作家の元に分配金が届いていないというのであれば問題はあるかもしれませんが、それはJASRACの関知するところではない、というより立ち入ることのできない部分です。

 

1つの楽曲に複数の著作権者が存在するケースの話は妥当です。著作権者が複数存在するのであれば、その中の1人にだけ使用料を払えば良いというものではないでしょう。
しかし、作詞・作曲・実演・原盤作成を全て1人の著作人格権者が行っている場合はどうでしょう? その様なケースでもJASRACに登録した時点で、著作人格権者自身が使用する(例えば自身のwebサイトのBGMとして流す)時にもJASRACに対して使用料を支払う必要があります。もちろん、JASRACから著作人格権者に分配金が支払われる訳ですが、当然、そこにはJASRACの中間マージが掛かる事になります。特に「分配金が届いていないとしても関知しない」と言う点に関しては、そもそも何の為の信託契約なのか、と疑問を感じます。この点に関しては、別途考察するつもりですので、ここではこれ以上の考察は省きます。

さて、ここからが今回の本題です。
YouTubeなどの動画配信サイトに関して、菅原氏は以下の様に述べています。

 


 長い歴史を経て優れたビジネスモデルを構築した放送事業に対し、ネット関連事業はようやく欧米に追いつこうかというレベル。信頼度という視点では大きな差がある両者ですが、最初にお話したとおり、それによって許諾を拒否する、という考えはありません。
 ただし、あくまでも正式な契約が必要です。その前提として、まず違法コンテンツの削除。次に、協会が権利者に対して使用料金を分配するために必要な情報提供システムの構築です。それらをどのような仕組みで整え、またいつから運用するのかが明らかになれば、その時点で正式契約を結ぶ考えです。
<中略>
 契約体系については、地上波テレビ局同様、総収入の2%をお支払いいだだく形になります。理屈的には個人複製をオープンしたユーザー個人に料金を収めていただくのが正式ですが、それを運営主体であるYouTube、ないしはニコニコ動画が本人にかわって処理する、という形式を採用することになるでしょう。
サービスとしてはコンテンツ個別に使用料が発生するビデオオンデマンドではなく、動画ストリームとみなして一括徴収する方針です。これによって、正式契約後にアップロードされたコンテンツは「違法」という概念もなくなります。
 その上で、数量に応じて権利者配分を行うため、関連情報を即座に提供していただけるシステムの構築を求めているのです。

 

情報提供システムの構築と契約金に関する主張には何の問題もないでしょう(違法コンテンツの削除については後述)。
弁理士の栗原潔さんがitmediaのブログで詳しく書いていますが、JASRACと契約してもここのサイトから利用状況を報告しないと著作人格権者への分配が正しく行われません。

「初音ミクsings」の1ヶ月について
http://blogs.itmedia.co.jp/kurikiyo/2007/12/sings1-0231.html

動画配信サイトとJASRACの契約は、JASRACと信託契約している著作権人格権者に対して権利者分配を行う為に行う訳ですから、実際に使用している楽曲の内容を把握出来るシステム構築が必要と言うのは当然の主張です。逆に言えば、著作人格権者へ分配金が届かないのであれば、JASRACにお金を払う意味が根底から崩れてしまいます。総収入の2%と言う金額設定が適切かどうかは判断する根拠がないので判りませんが、放送事業者と同じ設定にすると言うのは判り易い設定根拠でしょう。
それによって動画配信サイトの事業が成り立つかどうかは別の議論であり、最初に述べられていた通り、本質的にJASRACには関係のない話であるという事も理解出来ます。また、動画配信サイト側も「JASRACに契約金を払うと経営が成り立たないから契約しない」とは言えないでしょう。それは「今は著作権者を無視してるから儲かってる」と言っている様なものです。実際にはその通りだとしても、そんな事を言う訳にはいかないでしょうし、言った所で誰からも理解は得られない筈です。
ここで挙げられている「情報提供システムの構築」と「利益構造の問題」は、動画配信サイトが対処しなければならない「課題」と考えるべきでしょう。

さて、これらに対処するにはどうすればいいでしょうか?
「情報提供システムの構築」に関しては比較的簡単に対応出来る様に思います。性善説に則るのであれば、動画のアップロード時点でアップロードユーザが動画内で使用しているJASRAC登録曲の使用状況を登録するシステムをつけるだけで解決します。もちろん性善説を前提に問題なしとする事は出来ませんが、動画配信サイトとJASRACの契約が締結された後であれば、JASRAC登録曲を明確化する事はそのまま著作人格権者の利益になり、アップロードユーザにとっては何のデメリットもないのですから、殊更に性悪説に則ってこの様なシステムは機能しないと断定する必要もないでしょう。また、ニコニコ動画には、現在も「問題のある動画を通報する」機能があり、動画閲覧者は誰でも通報出来る様になっています。動画閲覧時に登録されている楽曲のリストも表示して、登録されていない楽曲を通報出来る様にすれば、現実的な範疇としては充分機能し得ると思います。
もちろん、単に面倒臭いと言う理由で指定を行わない人や、全く嘘の登録(や通報)をする愉快犯的な人も居るでしょうが、その様な行為に対してはアカウント停止等で充分対応出来るでしょう。
むしろ問題は「利益構造の問題」です。「総収入の2%」と言うのが、「売り上げの2%」なのか、「利益の2%」なのかによっても随分話が違うと思いますが、いずれにしても大きな額である事は間違いありません。各種動画配信サイトの利益状況がどうなっているのか知りませんが、一般利用者は無料と言う形態を維持し得ないと言う可能性も充分あると思います。或いは、USENが運営するGYAOの様に動画自体にCMを混ぜ込む、と言う様な形態への変更も有り得るでしょう(もっとも動画広告は割に合わないと言う話も良く聞きますが)。いずれにしても、今のままの利用形態を維持する為には、動画配信サイトは相当の企業努力が必要でしょう。一利用者としては、今の原則無料の形態が続いてくれれば、それに越した事はないと思います。しかし、利用者からは無料に見えても、それは単に動画配信サイト側で必要なコストを全部払っているからこそ実現出来ているのであって、お金が掛かっていない訳ではありません。無料サービスの継続を必要な事と判断して努力するのか、或いはそんな無理は出来ないと考えて有料サービスに切り替えるのかは、動画配信サービスを運営する企業がそれぞれに経営判断すべき事であって、利用者がどうこう言う事ではないでしょう。無料でなければ価値がないと考えるユーザは使わなければ良いだけですし、現実的に無料では実現出来ないサービスなのだとしたら、それを無料にしろと言う方が無理なのですから。

さて、後述するとしていた「違法コンテンツの削除」について書く前に、僕自身のスタンスについて書いておきます。著作人格権者(つまり作者)への利益還元は可能な限りしたい。これはもう単純な理由で、素晴らしいコンテンツを作ってくれた作者本人に対してお礼がしたいと言うだけです。一方で、JASRACに対しては、その主張に理解出来る所は多々あるものの、良いイメージは持っていません。今回のインタビューでも感じたのですが、公益目的の社団法人である筈が、まるで自社利益を追求する営利企業の様です。どうしても、自身の私腹を肥やす為に著作人格権者から搾取していると言うイメージが抜けません(これについては感覚論ではなく、具体的におかしいと思う点を別途記載する予定です)。また、違法コンテンツのアップロードや利用に関しては全く賛同する気も擁護する気もありません。泥棒は捕まるべきでしょう、ネットだろうとリアルだろうと。ですが、僕自身、ニコニコ動画は頻繁に利用していますし、そこにアップロードされている動画が大量に違法コンテンツを含んでいる事も当然認識しています。ですので、明らかに「情を知って」に該当します(これらのサイトで情を知らずに利用している人など存在しないと思いますが)。ただし、それとは別の論点でダウンロード違法化には反対です(これについても別途記載する予定です)。

最後に「違法コンテンツの削除」について書きます。「JASRACとの正式契約の前提として、まず違法コンテンツを削除しろ」と言う主張ですが、これはある意味では当然だと思います。現状、どこの動画配信サイトであれ、自社の運営するサイトに違法コンテンツがないと思っているサイトなど存在しないでしょう。仮にそれらのコンテンツを残したまま利用して良いと言う契約がJASRACとの間で締結出来たとしても、その中に含まれるJASRAC登録曲を全部掘り起こす事など不可能だと思います。一方で、菅原氏のインタビューにもある様にJASRACへの支払いは動画配信サイトの収入で自動的に決まる為、使用楽曲が判らない動画が存在すると言う事は著作人格権者が相変わらず分配を得られず損をするという事です。これでは何の為の契約なのか判りません。
一方で、今現在JASRAC登録曲を使用して違法にアップロードされているコンテンツであっても、JASRACと動画配信サイトの契約締結後に全く同じ内容で再アップロードし直せば、これは適法コンテンツになります。そうであるならば、現実的な落とし所は、今アップロードされているコンテンツの全削除ではなく、使用楽曲の確認出来なかったコンテンツのみの削除と言った所ではないでしょうか。動画配信サイト側は動画をアップロードしたユーザを把握出来るのですから、個々のアップロードユーザに対して一定期間内にJASRAC登録楽曲の使用状況を登録する様に促す連絡を行い、期間内に登録されなかった動画は全て削除する、とすれば必要な要件は満たしていると思います。この案は過去に遡っての使用量徴収は求めていない事を前提していますが、この前提が成立しない場合、動画を全削除しても意味がないので、成立していると考えて問題ないと思います。

長くなりましたが、ここまで考察して来た範囲において、JASRACの主張通りに話を進めても何の問題もない、と言うのが僕の結論です。むしろ動画配信サイトは早くJASRACと契約してJASRAC登録楽曲を適法に使用出来る様にして欲しいと思う位です。実際、「JASRAC登録楽曲を適法に使用出来る」と言うのは、動画配信サイトとしては充分な売り文句になると思うのですが…。なかなか契約締結って話にならないのは何故なんでしょう? 動画配信サイトの運営会社が、KASRACは嫌いだ、とか言ってるとも思えませんし…。不思議です。

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